救仁郷さんのあやしげな世界 : Compliance : 特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(通称:外来生物法): 対象外来生物の指定 inserted by FC2 system


『外来生物法』@ 対象 外来生物の指定
◇ 対象 外来生物の指定 ◇  
 平成28年10月に
  ・ナガエモウセンゴケ
   (Drosera intermedia
 が特定外来生物に指定されました。


 他の生物では交配種も指定されていることがありますが、「ナガエモウセンゴケ」の場合は対象外となっています。
 
 平成28年3月の答申時には、「ナガエモウセンゴケ」に加えて「エフクレタヌキモ(Utricularia inflorata)」もリストに掲げられていましたが、不可思議なことに「エフクレタヌキモ」は外され、それより大幅に基本情報に疑問や瑕疵のある「ナガエノモウセンゴケ」のみが指定されることになったのです。 
 指定をした理由が書かれている審議会議事録もパブリックコメントへの回答もおよそ科学的に論理的に納得いくものではなく、指定したいがために指定されたと言って過言ではないでしょう。

◇ 交配種が対象外の理由 ◇ 
 通常、交配種も規制される場合は「ナガエモウセンゴケ及びその交配種」と書かれるのですが、今回の指定では指定種欄に「ナガエモウセンゴケ」としか書かれていませんので、は対象外と判断して良いと思います。 
  
 主な交配種
 「D.エロイシアナ(D. ×eloisiana) D.ベレジアナ(D. ×beleziana)」※学名の変更がありました。
 「D.ヒブリダ(D. x hybrida)
 
◇ 「エフクレタヌキモ」の指定が見送られた真相に関する噂 ◇ 
 大幅に基本情報に疑問や瑕疵のある「ナガエノモウセンゴケ」では無く「エフクレタヌキモ」の指定が見送られたのは何故でしょうか?
 
 環境省のお役人に電話で尋ねたのですが、要領を得ない。
 手を変え品を変え質問すると、ポロっと 
 「学名が・・・」
 結局、ハッキリした答えは得られなかったのですが、「学名」と言うキーワードで色んな方から噂を集めてみると・・・ 

 日本に侵入した和名「エフクレタヌキモ」、コレについては昔から学名論争(種の特定?)がありました。
 
 「エフクレタヌキモ(Utricularia inflorata)」
    or
 「エフクレタヌキモ(Utricularia radiata)」
 
 今回の指定で環境省が出した学名は「U. inflorata」。
 どうも「U. radiata」派の先生から、
 「学名が違う!!!」
 との指摘があったようです。
 
 それが、日本のタヌキモ科の研究の第一人者のK先生だったらしく、反論しがたい。
 そこで学名論争の渦に巻き込まれるのを恐れた環境省が早々に撤退したとのことだそうです。
 あくまでも噂。真相は藪の中ですが・・・
 

 
  指定に纏わるエトセトラ
◇ 審議資料がとにかく瑕疵だらけ ◇  
 
 ナガエノモウセンゴケの外来生物指定の理由のすべてはこの文に凝縮されています。
 
 評価の理由
 貴重な湿地の絶滅危惧種などと競合し駆逐したり、絶滅危惧種を含む在来種の遺伝的攪乱を引き起こしたりすることなどにより、在来の生態系に大きな被害を及ぼす可能性がある。意図的に植えられたものが問題を引き起こしているため、早期の排除、拡散防止が望まれる。

 
 この結論を導いた理由として、次の情報欄にデータが書かれ、これを元に審議されています。
 
 環境省審議資料:特定外来生物等の選定作業が必要と考えられる外来生物(植物)に係る情報及び評価:抜粋.pdf(143KB)
 
 しかし何というか、モウセンゴケ属の愛好家からすれば、なんじゃこれってデータが幾つも書かれていますよね。特にこの欄、
 
◇ 栄養体からの再生能力 のデタラメ ◇
 根、茎、花茎、葉身などから不定芽を出すほか、ほふく枝、根茎、塊茎を複数生産したり、芽の頂端部分から一度に多数の鱗片状のむかごをふき出したりして増殖する(塚本,1994)。
 乾燥した環境では栄養繁殖によって爆発的に個体数を増加させる(片岡,2005)。

 
 いや〜ココまで何でもありのスーパードロセラがあったら、世界中のドロセラは確実に駆逐されますね。
 読んで判るとおり、モウセンゴケ属の植物が持つ様々な特徴を全て網羅して、あたかもナガエノモウセンゴケにその全能力が備わっているような誤解を招く文章です。
 あり得る話としての「根、茎、花茎、葉身などから不定芽を出す」についても実験室レベルでないと起こり得ない事象が日常的に起こるように思わせ、「乾燥した環境では栄養繁殖によって爆発的に個体数を増加させる」に至っては、元の論文を読むと「乾燥により半枯れ状態になった時に再び充分な水分が与えられれば」という非常に希有なケースについて論評したものの一部を切り出しており、食虫植物のモウセンゴケ属の専門家でない審議委員にマイナスの印象を植え付けています。
 
◇ 遺伝子攪乱に対する反論 ◇  
 
 評価の理由には「在来種の遺伝的攪乱を引き起こしたりすることなどにより、在来の生態系に大きな被害。」と書かれています。  
  
 モウセンゴケ属の愛好家ならご存じでしょう、モウセンゴケ(D. rotundifolia)とナガエノモウセンゴケ(D. intermedia)は自然交配種D.エロイシアナ(D. ×eloisiana) D.ベレジアナ(D. ×beleziana) を作ることが知られています。
 しかし、栽培環境で出来たことがあるでしょうか?
 管理人は10年以上一緒の場所で栽培していますが出来たことはありません。自然任せでは非常に稀だと思います。
 
 一般に遺伝子攪乱というのは、戻し交配の繰り返しにより、他系統の遺伝子を数%もつ生物が出来る事です。
 日本のオオサンショウウオに中国産のオオサンショウウオの遺伝子が混じったとか、メダカの地域変異遺伝子が無軌道な放流に因って崩れたとか聞いたことがありませんか?
 
 しかし、D.エロイシアナは不念性で種子は作らないし、再度モウセンゴケと交配して次世代を作ることもありません。
 ナガエノモウセンゴケの遺伝子を持つモウセンゴケが生まれる可能性はほぼ無いのです。
 この程度で遺伝子攪乱の可能性を指定理由にすれば、種間交配が可能な植物、つまりほとんどの植物について言及しなければいけません。   
 
◇ 競合・駆逐に対する反論 ◇ 
 
 評価の理由には「貴重な湿地の絶滅危惧種などと競合し駆逐したりすることにより、在来の生態系に大きな被害。」と書かれています。
 
 まず、この基本情報がずるいなあと一番に思う点は、ナガエノモウセンゴケの分布域がモウセンゴケと重なっており、多くの自生地で両者が混生していることが書かれていないことです。
 モウセンゴケの分布がナガエノモウセンゴケより広いため我が国のようにモウセンゴケのみの地域がありますが、両者の混生分布から考えると我が国の方が辺境であるのです。
 勿論、同じニッチェ(生態学的地位)を占めているのですから混生することにより競合していないとは言えません。
 しかし、両者が世界的に見ると混生しているとの情報は「競合・駆逐」及び「遺伝子攪乱」に対するイメージを大きく左右するのでは無いでしょうか。
 
 普通に考えれば、混生地域においてモウセンゴケの遺伝子汚染が起きているとか、ナガエノモウセンゴケとの競合によりモウセンゴケが駆逐されたとの報告があるからこそ問題視されるのだと思うでしょう。
 だけどそんな話は聞いたことがありません。
 えー事例が無いの、じゃあそんなに緊急的な課題ではないよね。
 と議論が進んでいく事を恐れたのでしょうか。
 
 さらに言えば、よく似た関係で我が国の尾瀬にはモウセンゴケとナガバノモウセンゴケが混生し自然交配種サジバノモウセンゴケを作りますが、それによりモウセンゴケやナガバノモウセンゴケの遺伝子汚染が起きているとか、どちらかが駆逐されたとの報告も聞いたことがありません。
 
 審議している専門家は、隠し球として情報を持っているのかも知れませんが、他の植物を指定したときには海外での駆逐例があれば情報に記載されています。
  始めに規制ありきなのか、このようなミスリードを助長する情報の取捨選択行われているような印象を受けます。
  
◇ パブリックコメントに対する あきれた回答 ◇ 
 
 上記のようなことをパブリックコメント(意見の募集)に書き送りました。
 すると帰ってきた回答はこれです。
 
 「ご指摘のとおり、検討資料の一部がモウセンゴケ類全般に関する記述となっており、本種に関する記述としては適切ではないものがありました。引き続き、検討の際には最新の情報を収集するよう努めたいと考えます。 
 一方で、本種は、既に国内の一部湿地において意図的に植えられたと考えられるものが定着し、湿地内で増殖してしまったため、防除が行われています。 
 このような本種による被害を防ぐため、指定が適当と考えます。 
 いただいたご意見については、防除手法を検討する際等に参考とさせていただきます。」

 
 基礎資料が間違っており、遺伝子紊乱の恐れは極端に少なく、競合駆逐は実例が無いと指摘されて、なお被害があると?
 それはどんな被害だと声を大にして言いたい。
 
 行政が一度企画したものを引っ込めるのは腹立たしいらしい。やっぱり指定したいがために指定されたのでしょう。
 
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