U. minutissima
(ヒメミミカキグサ)
U. minutissima (ヒメミミカキグサ)

学  名Utricularia minutissima
命 名 等*****
和 名 等ヒメミミカキグサ /U.ミニティシマ
分  布日本:愛知・三重・静岡・岐阜 /東南アジア
栽 培 法半陸生種
栽培難度★★★★☆
増 殖 法播種・葉挿し・株別れ
特記事項*****

 ◆あやしいコラム
概要
 
花・蕾の大きさ1~2mm、花茎の高さ5~20mmの超小型のミミカキグサです。
8~10月にかけて淡桃~紅紫色の花を咲かせ、花後に球形の果実を付けます。
 
その小ささを実感して貰うために左の写真では 0.5mm のシャープ芯を隣に立てて見ました。
栽培ついては極小過ぎて観賞価値はほとんどなく、希少性以外では発見する困難さを楽しむしか無いと思われるので記述しません。
   


ヒメミミカキグサは日本においては東海地方にのみ分布しています。
国のRDBを読んでも愛知県・三重県・静岡県のみに記録がありますが、三重県・静岡県はほぼ絶滅状態で確実な自生地は無いと考えられます。
従ってあまりにも希少性過ぎ、実物を見たことがある人が少ないため、湿地生殖物の専門家でもヒメミミカキグサとしてホザキノミミカキグサの矮小化個体の写真を掲載してることがあります。
 
現在、ヒメミミカキグサの自生地として公表されている保護地は愛知県の「壱町田湿地」と「葦毛湿原」の2カ所だけです。
 
「葦毛湿原」はいつでも自由に立ち入れますが、「葦毛湿原」は極小のヒメミミカキグサを自力で発見しなければいけないので見つけるには相当の観察眼を要します。
 
「壱町田湿地」は年数回の公開日にしか立ち入ることが出来ません。
しかし、「壱町田湿地」はボランティアの人がヒメミミカキグサの位置を特定し望遠鏡で見えるようにしてくださっていますので、確実に見ることが出来ます。
完全開花

不完全開花

完全開花・不完全開花
 
ヒメミミカキグサを見つけることを難しくしている要因は、この大きさの植物を炎天下の湿地で探すこと(生命の危機?)の他に、ヒメミミカキグサが完全開花しない場合が多いことにあります。
写真のように完全開花したものは割と目立つ感じとなりますが、不完全開花株は非常に目立ちません。
 
この現象は生育期の温度又は日照不足が原因と考えられ、栽培下においてで、30本を超える花茎についた花の内、完全開花したのはわずか2輪だったことがあります。
 
このような状態でも種子は出来るので個体維持は出来るようです。

金生水沼沢植物群落 
 
日本ではヒメミミカキグサは三重県鈴鹿市の金生水(かなしょうず)沼沢植物群落において1905年に発見されたました。 
 
当時は牧野富太郎により日本固有種としてニッポニカ(U. nipponica)の学名が与えられましたが、1980年に小宮定志先生により再分類され、東南アジアに自生するミニティシマ(U. minutissima)に組み入れられました。


現在この沼沢群落は鈴鹿市の教育委員会にて管理されており年に数回の観察会以外は立ち入ることが出来ません。 
管理人はフェンス越しにしか覗いたことしかありませんが水の手が変わり、ポンプアップにて維持されており、ヒメミミカキグサが自生出来るような裸地は残っていないようです。
U. minutissima = {U. spec ?, violet flw.}

U. minutissima {white flw.}
マレーシアのミニティシマ 
 
2007年に海外よりマレーシア産の U. minutissima を輸入いたしました。 
デカイです。 
日本のホザキノミミカキグサと大きさ的には変わりません。
おまけに白花はともかくもう一方は兜の錣(しころ)の様に羽が出てきました。
 
これだけ形状が違う物が同一種であるとは、分類学素人には全く思えません。
もっとも管理人の知っている日本の U. minutissima の完全開花の次にこんな形状になるかもしれません。
 
と、思っていましたが2010年頃に埼玉のT沢さんが導入されたマレーシア産の U. minutissima は日本のものと全く変わらず、2007年に入れたものの真偽が危うくなりました。



なお、今年(2022年)の秋にT沢さん由来のマレーシア産の U. minutissima を入手しましたので、開花したらまた報告します。
撮影:管理人

撮影:堀口氏

撮影:加古氏

周伊勢湾要素植物 
 
ヒメミミカキグサはシラタマホシクサ・シデコブシなどと同様に東海地方に特有の分布をする周伊勢湾要素植物又は東海丘陵要素植物と呼ばれる植物群に属しているされています。
周伊勢湾要素植物は東海4県(愛知・静岡・岐阜・三重)に跨がった分布を示していますが、唯一ヒメミミカキグサだけが愛知・静岡・三重の3県でしか見つかりませんでした。
比較的に海に近い湿地で見られたため、そう言った理由であろうと言われてました。
 
しかし、2007年9月、東海食虫植物愛好会の堀口氏が岐阜県内の湿地にてヒメミミカキグサらしき植物を発見しました。
 
発見時は開花の盛りが過ぎていたので翌2008年8月、堀口氏率いる東海食虫植物愛好会の面々が岐阜県の有識者とともにヒメミミカキグサであることを確認し、標本採取を行いました。
 
ヒメミミカキグサの分布が岐阜県に広がったのです。
 
しかもこの自生地、今まで知られている自生地のヒメミミカキグサを全てひっくるめてもその数倍の量が自生していると思えるのです。
少なくても日本最大の自生地と言って過言ではありません。
 
食虫植物史における歴史的偉業と行って良いでしょう。



その後、この発見に触発された岐阜県の農業高校勤務のI先生が似た環境の湿地を調査したところ、数か所の湿地にてヒメミミカキグサの自生を確認しました。
東海地方にお住まいの方は今一度、存知よりの湿地を確認されたら如何でしょうか?
ヒメミミカキグサが自生しているかもしれません。
「救仁郷さんのあやしげな世界」TOPページへ
inserted by FC2 system